指標生物とは
Lookatプロジェクトメンバーの瀬川 明彦(せがわ あきひこ)です。
今回のテーマは指標生物についてです。
環境省と国土交通省は、河川の水質を判定するために全国水生生物調査を1984年度から行っています。全国水生生物調査では、河川に生息する水生生物を選び、川にどの生き物が多く見られたかを調べることで、水のよごれの程度を判定しています。この選ばれた河川に生息する生物を指標生物と呼んでいます。
水のよごれを表す水質は4つに区分されており、水質階級I~IVに分け、水質階級ごとに指標生物が決められています。
水質階級 | 種類数 | 指標生物 |
水質階級I (きれいな水) |
10種類 | アミカ類、ナミウズムシ、カワゲラ類、サワガニ、ナガレトビケラ類、ヒラタカゲロウ類、ブユ類、ヘビトンボ、ヤマトビケラ類、ヨコエビ類 |
水質階級II (ややきれいな水) |
8種類 | イシマキガイ、オオシマトビケラ、カワニナ類、ゲンジボタル、コオンマ、コガタシマトビケラ類、ヒラタドロムシ類、ヤマトシジミ |
水質階級III (きたない水) |
6種類 | イソコツブムシ類、タニシ類、ニホンドロソコエビ、シマイシビル、ミズカマキリ、ミズムシ |
水質階級IV (とてもきたない水) |
5種類 | アメリカザリガニ、エラミミズ、サカマキガイ、ユスリカ類、チョウバエ類 |
※ 全国水生生物調査のページを参考に作成
河川にすむサワガニやカワゲラなどの水生生物の中には、水のよごれの程度によって生息できたり、できなかったりする種類がある。そうした水生生物を指標として用いています。
まさに生きるKPIといえます。
水生生物を指標にするため一般の人にわかりやすく、高価な機材などがいらず誰でも簡単に参加できる、調査により身近な自然に接することで環境問題への関心を高める機会にもなると言われています。
水質階級の区分は、川の水のよごれの程度により4段階に分けられます。
水生生物調査の記入例
※ 全国水生生物調査結果 集計用紙を参考に作成
指標生物はどのように測定されるのか
調査用紙には水質階級ごとに指標生物があらかじめ記載されています。
1.調査場点など、他必要事項を記入します。
2.調査地点で見つかった指標生物の蘭に○印をつけます。
3.その内、数が多かった上位2種類の指標生物は欄に●印をつけます。
※3種類がほとんど同じくらいの数だった場合は3種類まで●印をつけます。
水質はどうやって判定されるのか
調査用紙の下段の縦に指標生物、横に水質階級が記載されています。
1.「1.○と●の個数」に○と●の個数を水質階級ごとに記入します。
2.「2.●の個数」●のみの数の個数を水質階級ごとに記入します。
3.「3.合計」に1と2の合計を記入します。
4.3の数字が最も大きい水質階級を調査地点の水質階級と判定します。
5.その地点の水質階級の欄に、I、II、III、IVのローマ数字を記入します。
※2つの水質階級が同じ数字になった場合、数字の少ない方の水質階級を調査地点の水質階級と判定します。
水質改善に向けてどんな取り組みをすべきか
国土交通省 令和2年全国一級河川の水質現況(令和3年7月1日発表)によると、
「過去10年間の水質改善状況」の順位1位が、兵庫県川辺郡猪名川町にある猪名川です。大野山を水源地とし、大阪府・兵庫県・京都府の 11 の市と町を流れながら神崎川に合流する河川となっています。
猪名川は約 10 年前までは、全国一級河川水質調査においてワースト 5 の常連でした。猪名川への関心は高いものの水質がよくないと感じている人が多い傾向にありました。当時の住民アンケートからは、水質調査や清掃活動への参加も少なく、広報活動や啓発活動が行き届いていない実態が明らかになったとのことです。
実態がわかると、水質改善に向け行政と住民が一体となって取り組む重要性を認識し、猪名川の水質改善に向けて、猪名川を知り、学ぶ様々な取り組みが、住民や市民団体の協力のもと進められました。
猪名川の広報・啓発に重要な役割を担っているのが『猪名川河川レンジャー』です。『猪名川河川レンジャー』は、地域と連携した河川整備を進める上で、住民に関心を持ってもらい、住民参加型の河川整備の推進を支援する立場で、住民と行政との関係をコーディネートし、人と川をつなぐ役割を担っています。猪名川流域の水辺での活動などを通じて、「防災」「維持管理」「河川利用」「環境保全」「水辺文化」の5つの分野に貢献しています。
「猪名川クリーン作戦」は、平成16年7月から継続している一斉清掃活動です。河川敷の清掃を通して流域の方々に猪名川へ関心を持っていただくことを目的に開催されています。猪名川流域で活動する団体が「猪名川クリーン作戦実行委員会」として主催、猪名川河川レンジャーと協力して実施しています。
参考までに、地域の団体、地域の皆さんの参加のもと、猪名川流域の16箇所で一斉に行われました「第19回猪名川クリーン作戦」の結果は
■ 参加 : 735人(猪名川流域の活動団体・企業等(37団体)・一般参加)
■ 成果 : 可燃ゴミ469袋、不燃ゴミ82袋、粗大ゴミ(自転車・タイヤ・バイク等)を回収
とのことです。
SDGの6は「安全な水とトイレを世界中に」で、すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保するとなっています。そしてターゲットの6.3は、2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。まさにこの取り組みに該当します。
そして「猪名川の愛護セミナー」では、指導員の方と一緒に川の中にすむ指標生物(水生生物)を採取して、種類や数を調べ、猪名川の水質状態を判定されています。
平成28年の開催状況はこちらを参照ください。
SDGsに取り組む際に大切なこと
一度汚れてしまった川でもきれいするという意識、意識が変われば行動が変わる、行動すれば結果がでる素晴らしい例だと思います。大切なことは目標に対して、自分達ができることを考え、行動されていることです。そして継続されていることです。
目標に紐づく、結果に影響を及ぼす、実行可能な活動がKPIでしっかりと測定されていることがよくわかります。
このような事例は、もっとアピールしてほしいですし、もっと報道してほしいです。
最後に
コロナ禍で全国水生生物調査が実施されていませんでしたが、今年は行われます。
→ 国土交通省 全国水生生物調査に参加しよう!(令和4年5月31日)
小学生、中学生、高校生、一般の人々のだれもが簡単にできるようになっているので、皆さんも参加してみてはいかがでしょうか。