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統合報告書とは?目的と作成方法、SDGsの取り組みを公開するポイント | SDGsコラム

2023.06.07

統合報告書とは?目的と作成方法、SDGsの取り組みを公開するポイント

企業が社会的責任を果たすことは重要であり、情報開示を目的とした「統合報告書」を作成する企業が増えています。
統合報告書とは、企業の財務情報と非財務情報の関連性をまとめたレポートです。
この記事では、統合報告書の作成目的や方法、SDGsの取り組みを公開するポイントについて紹介します。

統合報告書とは?

統合報告書とは、企業の財務情報(売上や事業戦略など)と、非財務情報(CSRや知的財産など)の関連性をまとめたレポートです。
海外では、企業の社会的責任が投資家にとって重要な要素となり、統合報告書の発行が一般的になってきました。日本では法的に発行義務はありませんが、企業価値を評価する情報の一つとして重視されるようになり、統合報告書を導入する企業が増えています。
統合報告書は投資家だけでなく、顧客や従業員に対して情報を発信するツールとしても活用され、企業のブランディングにも役立てられています。

統合報告書を作成する目的と必要性

統合報告書を作成する目的は主に2つあります。
一つ目は、CSR(企業の社会的責任)を投資家に周知することです。数値では表現されない企業独自の強みを明示し、投資家との関係を強化することで、新たな投資家を引きつけることが期待されます。
二つ目は、これまで報告されていなかった非財務情報を可視化し、ESG投資を促進することでダイベストメント(投資撤退)のリスクを低減することです。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略語です。投資家は従来、財務情報を用いて投資先の価値を評価してきましたが、現在はESG要素を考慮するESG投資が注目を集めています。そのため、ESGへの取り組みをアピールできなければ、資金調達が困難になる可能性があります。

統合報告書を作成するメリット

統合報告書の作成は、企業や人材確保にもメリットがあります。投資家に対しては、長期的な持続可能性を示すことで、安定的な長期投資リターンを提供します。また、従業員は、企業理念やビジョンの共有、情報交換がしやすくなります。そして人材採用の際は、求める人材の確保を可能にします。

日本企業の統合報告の現状と事例

統合報告書を発行する企業数は増加しており、宝印刷D&IR研究所のESG/統合報告研究室が実施した「統合報告書発行状況調査2022 最終報告」によると、統合報告書を発行している企業数は872社(2022年12月末時点)に上り、前年同時期から約20%増加しています。
これは、調査開始以来最大の増加数だった前年をさらに上回る数です。背景として、世界的なESG情報開示の規制化の広がりを受けて、日本でも大企業を中心に積極的に統合報告書発行に取り組んでいることがあげられます。
ここでは、5つの事例を紹介します。

オムロン 統合レポート

オムロン株式会社は2012年版以降、「アニュアルレポート」と「企業の公器性報告書」を統合し、「統合レポート」を発行しています。2023年3月には、第2回「日経統合報告書アワード」でグランプリを受賞しました。

オムロン統合レポート https://www.omron.com/jp/ja/integrated_report/

双日 統合報告書

双日株式会社は「統合報告書」で、「中期経営計画2023」の進捗を中心に、持続的な企業価値向上に向けた取り組みを紹介しています。

双日 統合報告書 https://www.sojitz.com/jp/ir/reports/annual/

味の素 統合報告書

味の素グループは「統合報告書」で、ASV(Ajinomoto Group Shared Value)経営を掲げ、企業価値を高めるために社長メッセージで「志」やコミットメントを伝えています。また、コーポレート・ガバナンスやサステナビリティ推進の強化についても紹介しています。

味の素統合報告書 https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/annual.html

ソニー Corporate Report(統合報告書)

ソニーグループ株式会社は、全世界で事業を展開するソニーグループを対象として、中長期の価値創造に向けた経営方針や事業戦略など、財務情報と非財務情報を統合的に報告しています。

ソニー統合報告書 https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/corporatereport/CorporateReport2022_J.pdf

 リコー 統合報告書

リコーグループは、2036年のビジョンに「“はたらく”に歓びを」の理念を掲げています。中長期的な企業価値向上に向けた取り組みへの理解を促進するために、統合報告書を発行しています。

リコーグループ 統合報告書 https://jp.ricoh.com/about/integrated-report

統合報告書の作成方法

統合報告書の作成には、多くの企業がIIRC(国際統合報告委員会、現在のValue Reporting Foundation)が公表する「国際統合報告フレームワーク」を使用しています。
「国際統合報告フレームワーク」の要旨によれば、統合報告は「企業報告に関して、よりまとまりのある効率的なアプローチを促すとともに、財務資本の提供者が利用可能な情報の質を改善することによって、より効率的で生産的な資本配分を可能とする。」とされています。また、主な目的は「財務資本の提供者に対し、組織がどのように長期にわたり価値を創
造、保全または毀損するかを説明することである。統合報告書は、従業員、顧客、サプライヤー、事業パートナー、地域社会、立法者、規制当局、および政策立案者を含む、組織の長期にわたる価値創造能力に関心を持つ全てのステークホルダーにとって有益である。」と述べています。
「国際統合報告フレームワーク」は、7つの指導原則と8つの内容要素で構成されています。

指導原則

7つの指導原則は、統合報告書の作成および開示方法に関する情報を提供し、報告書の内容や表示において基礎を提供します。

・戦略的焦点と将来志向
・情報の結合性
・ステークホルダーとの関係性
・重要性(Materiality)
・簡潔性
・信頼性と完全性
・首尾一貫性と比較可能性

出展:「国際統合報告フレームワーク」日本語版
https://www.integratedreporting.org/resource/international-ir-framework/

統合報告書でSDGsの取り組みを公開するポイント

SDGsへの注目の高まりに伴い、SDGsへの取り組みを公表する企業が増加しています。企業は、統合報告書の冒頭や経営者のメッセージなどの部分で、SDGsへの関与とコミットメントを述べています。
例えば、花王株式会社の「花王統合レポート」では、「トップメッセージ」で環境問題や社会問題に言及し、「戦略」で「持続可能な社会に欠かせない企業になる」と宣言しています。

統合報告書に関するよくある質問

統合報告書とは何ですか?

統合報告書を作成する目的は主に2つあります。
一つ目は、CSR(企業の社会的責任)を投資家に周知することです。
二つ目は、これまで報告されていなかった非財務情報を可視化し、ESG投資を促進することでダイベストメント(投資撤退)のリスクを低減することです。

統合報告書を作成するメリットは何ですか?

統合報告書の作成は、企業や人材確保にもメリットがあります。投資家に対しては、長期的な持続可能性を示すことで、安定的な長期投資リターンを提供します。また、従業員は、企業理念やビジョンの共有、情報交換がしやすくなります。そして人材採用の際は、求める人材の確保を可能にします。

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