こんにちは。Lookatプロジェクトメンバーの長内 賢(おさない けん)です。
当コラムでは、SDGsに取り組む企業・団体様へのインタビューを行い、皆様の新たなアイデアの種となる情報の発信を目指します。
第三回目の当記事では、東アフリカのマラウイで給食支援を行う「せいぼじゃぱん」の山田 真人さんにお話をうかがいました。
社会課題の解決を生業とするNPOで働く山田さんは、SDGsをどのように捉え、取り組んでいるのでしょう。
山田 真人
上智大学で英文学、神学を学ぶ中で、せいぼの “Doing Charity by Doing Business”の精神に魅了され、2017年4月にせいぼに入社。同時期に、せいぼの支援会社であるイギリスの通信事業会社Mobellにも入社。現在、Mobellのマーケティング&セールス部門で働きつつ、せいぼでマラウイの子どもたちの支援に携わる。
せいぼじゃぱん
https://www.seibojapan.or.jp/
東アフリカのマラウイで学校給食支援事業を展開
ーーご活動内容について教えてください。
山田:東アフリカにあるマラウイで、現地の共同体と協力しながら給食支援事業を行なっています。
幼稚園と小学校を対象に1日に約1万7000人分の食事を提供しており、活動は主に寄付金に支えられています。
山田:マラウイのコーヒー豆を使った「ウォームハーツコーヒー」の販売も行っていて、販売価格の100%をマラウイに寄付しています。豆の仕入れ、焙煎、包装、配送費用、営業費用を支援企業にご負担いただくことで、全額を寄付に充てることが可能となっています。
ちなみに、私はせいぼじゃぱんだけではなく、支援企業の一つであるMobell(モベル)にも勤めています。
ーーなぜ事業会社であるMobell社が、マラウイで支援を始めたのでしょうか?
山田:Mobell社は「Not only travel the world but change the world(旅するだけではなく、世界を変えろ)」というヴィジョンを掲げています。
このため、こういった活動に従事することに前向きです。社長自身も旅が好きで、私たちはマラウイで出会いました。
マラウイには、チロモニ地区と呼ばれるエリアがあって、20年ほど前まではスラム街のような場所でした。弊社の代表がそこを訪れた際、「ここで何か始めよう」と土地を買ったんです。
社長は元々レンタルビジネスで成功したので、マラウイでも重機のレンタルを始めたところ、需要があり成功したんです。
その結果、現地で雇用も生まれ、チロモニ地区は都市部のように発展しました。一連の流れで、事業の一つである職業訓練センターのビーハイブが誕生したんです。
ーー給食支援事業は、どのような流れで始まったのですか?
山田:2015年頃、マラウイの保育園の子どもたちの多くが栄養失調で苦しんでいるという知らせを受け取りました。 それと同時期に、国連の発表でマラウイでの食糧飢饉が過去10年の中で最悪の状態であるとの警告もありました。
さらに、その年にマラウイで歴史的な大洪水が起こり、特に山間部が大きな被害を被りました。もともと、山間部にはJICAのプロジェクトの一環で日本から米粉が送られていましたが、2015年がちょうどプロジェクト終了の年だったんです。
このままでは、現地の子ども達が栄養失調の状態のままになってしまいます。そこでビーハイブのスタッフがせいぼマラウイを立ち上げ、給食支援が始まりました。
ーーなぜ給食なのですか?
山田:学校給食を提供することは、親が子ども達を学校に送り出すモチベーションになります。子どもたちは、学校に来ることで栄養のある食事を摂ることができ、さらに教育を受けられる。マラウイの職業は、公務員か農業に二分される傾向にあります。それが格差につながっているので、学校に通って学ぶことで、さまざまな職業に就く可能性もひらけていくでしょう。
ーー日本国内では、これらの活動を伝えるために学生向けの講演などもされていますよね。
山田:私達の活動を積極的に伝えることで、人を巻き込んでいきたいのです。なかでも教育の現場とつながることは、とても重要だと考えています。
ーー講演を聞いた学生さんの反応はどうでしょうか?
山田:私が学生の頃は、先生の話を聞き、ペーパーを書いて授業が終わることがほとんどでしたが、今の学生さんたちは、「何のためにこの授業があるのか」をシビアに見ているように感じます。
「エシカル就活」という言葉もありますし、企業を見る目も変わってきてるのではないでしょうか。
社会課題を解決する、NPO自身の社会課題とは?
ーーマラウイの社会課題を解決するために、ご活動が始まったんですね。
山田:そうですね。社会課題を解決するために、NPOとしてさまざまな活動を行なっています。ただ、活動を進める上で、NPO自体への課題も多々感じます。
ーーどのような課題があるのですか?
山田:例えば、日本におけるNPOは、海外と比較して信頼性が低い気がします。「NPOはお金の流れが不透明」というイメージを持たれているからかもしれません。
アメリカにはGuide Starという団体があって、ミシュランのようにNPOに星がついてるんです。日本にはそれがなくて、「NPO法人」か「認定NPO法人」のどちらか。
欧米のようにNPOの活動の良し悪しを測る方法がないので、「このNPOは友達がやってるから」など、人のつながりなどで判断をしがちです。
さらに、認定NPO法人であれば税控除の対象になりますが、認定を受けていない場合、私達のように支援企業を探す必要があります。認定がないために、助成金がおりないこともあります。すると、NPO間で格差が発生してしまうんです。
ーー良し悪しを判断する機関がないことが、資金集めにも影響するんですね。
山田:はい。私達は運良くパートナーが見つかりましたが…。
コーヒー豆の支援をしてくださっているアタカ通商株式会社は、コーヒー業界だと有名な会社の一つです。
コーヒーは農作物だから、不作の時もあります。でも、どんな時でもマラウイの農園から少量でも買い続けてきたそうなんです。すると、今度はコーヒー豆の買い付けが難しい時に、その農園だけはアタカ通商のためにコーヒーを確保してくれたりする。
そうやって関係性を作るなかで、「この国のコーヒー農園のためにもっと何かしたい」とアタカ通商の社長さんが考えていたタイミングで、私たちと出会いました。
ーー良い支援企業に、良いタイミングで出会えたんですね。
山田:はい。サプライヤーとNPO、双方のニーズが合う瞬間は絶対にあるんです。でも、現在はNPOの信頼性も、企業がどこまで農園のために行動したいと思ってるかも数値化できていません。だから属人的になってしまう。
また、初期の頃を知っているメンバーは事業に対して情熱的で、仕事に全部捧げるぐらいの勢いがあります。でも、みんながみんなそうではないので、事業の継続性や熱意の伝え方などには、課題がありますね。
自社事業を分解し、SDGsで取り組めることを探る
ーーSDGsをどのように捉えていますか?
山田:「努力目標」として良い意味で捉えてます。やってもやらなくても良いので、敷居が低くなると思います。
ーー目標別に分けられて、体系化されてるから取り組みやすいのもありますよね。
山田:そうですね。目標やカラー別に分けられていることを上手く使って、企業のブランディングやマーケティングに活用するのも良いのではと個人的には考えています。
SDGsは、国連が掲げていることなので信頼性が高いです。企業が「SDGs」というキーワードを上手く使えば、活動に共感する人が増えマーケットが潤います。
結果として「良いこと」につながるのであれば、最初は部分的な取り組みであったり、企業活動にSDGsを使うことも悪いことではないと思うんです。
ーーSDGsにどう取り組んでいったらいいかわからない方もいます。アドバイスがあれば教えてください。
山田:アドバイスになんてならないかもしれませんが…。例えば、学校給食を作っている会社があるとします。業種が「学校」なので、SDGsだと「質の高い教育をみんなに」や「飢餓をなくそう」に繋がります。
給食を作るスタッフは雇われているので、「働きがいも経済成長も」にも繋がりますね。このように、いくつか関わりあることを見つけ出せると思います。
そこに関連するNPOを探して協力したり、インフォコムさんのような企業に相談して、相性の良い企業を紹介してもらうなども一つの方法ではないでしょうか。
ーーNPOと協力することで色々なアイデアが生まれそうですね。
山田 : そうですね。また、支援を通して私たち自身にも学びがあり、逆に助けてもらうこともあると考えています。
SDGsでは「1日1.9米ドル未満で生活しなければならない状態」を「極度に貧しい暮らし」としています。しかし、SDGsの他に「世界寄付指数」や「人間開発指数」もあり、ある指数ではランクの低い国も、他の指数ではランクが上がることもあります。数値が高い部分についてその理由を調べたら、先進国が学ぶこともあるはずなんです。
マラウイでのさらなる給食支援と、活動の発信を目指して
ーー今後の展望を教えてください。
山田:拠点を現在の場所から徐々に北部に移し、学校給食をさらに広めていくことですね。
マラウイの北部は幼稚園が少ないんです。でも、働くお母さんたちが子どもを預けるコミュニティスペースのような場所があります。そこは幼稚園になるポテンシャルがあるので、そういった場所に給食を出していくことが、マラウイのスタッフと共有している目標ですね。
ーー日本側の目標はありますか?
山田:現在、高等学校では総合的探究の時間が必修になっています。でも、総合的探究は外部のリソースに頼らないとできないと思うんです。
大学生インターンの歌代さん
貧困問題などに興味がありインターンに応募
山田:例えば貧困について探求するにあたり、教科書や書籍だけでは不十分です。実際に貧困問題解決に取り組む方に話を聞いたり、自分自身も活動しなければ、1次資料は手に入らないですよね。
こういった背景から、学校とNPOや企業との連携が始まりました。だから、企業がSDGsに取り組むことは、学校教育にも少なからず影響してくるんです。
少し壮大かもしれませんが、ソーシャルグッドなことにも配慮しつつ、経済を動かすマインドを持った子たちを育てることが、日本サイドの目標です。
SDGsの成果を分かりやすく見える化し発信するツール
Lookat.ソーシャルメーターがバージョンアップ。サステナブルな取り組みの実績を公開する機能が追加されました。ぜひご確認ください!