SDGsの身近な例から学ぼう
Lookatプロジェクトメンバーの長内 賢(おさない けん)です。
近年知名度が上がってきているSDGsですが、個人の取組みとして具体的にはどんな課題を解決すればよいのか、なかなか身近に感じることができない人も多いのではないでしょうか。今回はそんな方のために、身近に潜むSDGsの12番目のゴール「つくる責任、つかう責任」に関する課題をご紹介します。
アボカドが抱える課題
豊富な栄養が含まれることから「森のバター」とも呼ばれ、人気のアボカド。
健康と美容に良い食べ物とされおり、手軽に買える身近な食べ物ですが、その栽培地を巡って大きな問題を抱えていることをご存じでしょうか。
アボカドは「悪魔の果実」か?――ブームがもたらす環境破壊と難民危機
・アボカド栽培には大量の水が必要になるため、消費が世界的に増えるなか生産地では水不足が深刻化し、健康被害も出ている。
<<中略>>
・豊かな国のライフスタイルによる影響は、アボカド生産国における暴力の増加にも及んでいる。
(出典:ニューズウィーク日本版「アボカドは「悪魔の果実」か?──ブームがもたらす環境破壊と難民危機」,2021)
美容と健康のスーパーフードが悪魔の果実とは穏やかではありません。
一体どういうことなのでしょうか。
アボカドは深刻な水不足を引き起こす果実
アボカドが抱える問題の一つは栽培地に引き起こす水不足です。
アボカドは1つにつき生育するのに70リットルの水が必要で、育てるには大量の水資源が必要となります。
平均的にアボカド栽培には1トン当たり1,800立方メートルの水が必要で、
これはバナナ(790)、オレンジ(560)、スイカ(235)など多くの農作物と比べて、非常に高い水準にある。
メキシコではオリンピックで使用されるプール3,800杯分の水がアボカド生産のために1日で使用される。
(出典:ニューズウィーク日本版「アボカドは「悪魔の果実」か?──ブームがもたらす環境破壊と難民危機」,2021)
このように1トン当たりに必要とされる水の量は他の果物と比べても多く、年々世界での消費量が増えているアボカドがその生産地域で大量の水資源を必要としていることが分かります。
具体的にはどのような現象が起きているのでしょうか。
主な生産国の一つであるチリ中部では、アボカド栽培のための大量の水の消費で川が枯れ、生活も農業もままならない人達が苦境に立たされていると言います。
また、水インフラが民営化されていることも相まって、大規模農園や企業が水資源を買い占め、貧しい小規模農園や一般市民へは水が行き渡らなくなっています。
市民の生活に影響が出ているにも関わらず、アボカドの生産が進められている背景には高まり続けるアボカドのニーズがあります。
チリのアボカドの主な輸出先は北米、ヨーロッパ、中国であり、一部には日本も含まれています。輸出先の消費者はチリの人々の水を利用する権利を間接的に侵害しているといえるのではないでしょうか。
アボカドが引き起こす暴力の渦
アボカドが抱える問題のもう一つには麻薬カルテルによる暴力行為があります。
アボカド生産量1位のメキシコでは、アメリカが巨大輸出国となった頃から麻薬カルテルが、大きな輸出産業であるアボカドに目をつけ、アボカド農家から金銭を搾取するようになっているそうです。
麻薬カルテルはアボカド農家に対し誘拐、殺人、恐喝などを行います。アボカド農家は輸出する際に、カルテルに金銭を支払う必要に迫られているため、アメリカをはじめとする世界で食べられているアボカドは麻薬カルテルへの資金源となっているとも言えます。
一部では武装する自衛組織が発足し、平穏を取り戻した地域もありますが、いまだにカルテルの武力は強く、この平穏もいつまで続くかはわからないという不安定な状況が続いているそうです。
日本で食べているアボカドはどこ産?
日本は消費するアボカドの99%を輸入に頼っており、その輸入量は年間約8万トンとされています。消費量第1位のアメリカが年間110万トンを消費することを鑑みると、世界規模では決して大きい方ではないですが、近年は国内でもニーズが高まり、36年連続で輸入量・輸入額共に右肩上がりの状況が続いています。
そしてその輸入されるアボカドのほぼすべてがメキシコ産となっています。
ではそのアボカドは上で述べたような問題とは無関係だと言えるのでしょうか。
メキシコのアボカド農園に足を運び、開発輸入に携わる川井篤士さん、果樹などへの地球温暖化の影響を研究する農研機構(茨城県つくば市)の杉浦俊彦さんは以下のように述べています。
日本で環境に配慮したと証明された「持続可能なアボカド」を手に入れることはできるのか聞いてみた。杉浦さんも川井さんも、「手軽に手に入れるのは難しい」と見ている。
川井さんは「フェアトレード認証マークをとるか検討をしていますが、認証をとると人件費や工数がさらにかかり、価格を上げざるを得ません。認証マークをとったアボカドをどれだけの人が選んでくれるのか分からないのが現状です」と話す。
(出典:ハフポスト「「持続可能なアボカド」を選ぶために知っておきたいこと。アボカドのプロに聞いた」,2021)
現状、明確にクリーンと言えるアボカドを手軽に入手・消費することは難しいというのが答えのようです。
それでも、まずはこうした事実を知り、消費者として正しい行動を積み重ねることが重要だと言えるでしょう。
消費者としてできること
SDGsの12番目のゴールは「つくる責任、つかう責任」です。
そこには生産者も消費者も共に持続可能な世界を目指そうという意味が含まれています。
アボカドに限って言えば、日本に住んでいる大半の方は消費者になります。
消費者として何ができるのかを考えること。
もし、持続可能なアボカドとそうとは言えないアボカドを選ぶ機会に直面した際にどちらを選ぶべきかを知っていること。
持続可能な世界を目指す消費者としてそれが正しい姿と言えるのではないでしょうか。
また、今回のアボカドのような問題は他の果物でも発生しているかもしれません。
アボカドの問題を入口としてほかの青果物が抱える問題や消費者としてSDGsに貢献できることはないかを考えてみてはいかがでしょうか。
参照元
輸入アボカドについて
https://www.funasho-s.co.jp/proddetail/avocado/
【最新版】アボカドの輸入国状況,数量や金額に関するデータまとめ!
https://okinawan-avocado.com/2020/04/22/avocado_import/